物流も行動変容のできる経営体に

コロナ禍という不確実性が襲ってきた今年、経営に迷いも不安もあるに違いない。世界も国家もただただ慌てて、繰り出す打ち手が空振りであったり、効果が僅かだったりと停滞ムードが続いている。大きな嵐が再び襲う気配もあり、ロックダウンの解除や行動制限が続いている。日本でも国民のコロナショックを支えるために一時給付金や経営者には持続化給付を提供している。この恩恵をありがたく受け取りながら、次の段階を構想する時期に来ている。

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この図に何を見ることができるだろうか。2頭のうさぎ、2匹のアヒル、うさぎを襲うアヒル、アヒルを追ううさぎ。何も見えないこともあるだろうし、気づいて初めて見えることもあるだろう。事実は観察するものの経験によって解釈がことなるのだ。

 

コロナ禍という激動の最中にある経営活動は、需要の縮小、キャッシュの漏洩、経営計画の中断、チーム心理の弱体化、将来展望の不安など、どれもこれも事実であるが、どのように解釈するかはヒトの経験値によることが多い。だからこそリーダーシップが期待されるわけだが、かならずしも先頭に立つ必要はない。従業員メンバーの意欲を高め、不安を挑戦に切り替えるためのアドバイスを送り続ければよいのだ。声高いヒトがリーダーではなく、環境や空気を作りだすのが役割だ。

 

  • 行動変容の原則

 

ショックには治療が必要であり、そのための一時金が準備されていた。ショックから回復する力をリジリエンス(回復力)と呼ぶ。ヒトのリジリエンスには共通項がある。病によって弱った体からの回復には個体差がある。日頃の体力や免疫力、精神力やサポートを受け入れられる寛容性など様々な要素が寛解への道のりを決めてしまう。企業体では抜け落ちた需要や市場を支える追加事業:Adaption 、素早い機転と行動力:Agility、生存ベースとなる資産:Asset の3Aが何より重要だろう。短期の行動を支えるための3Aと今後の世界を見通す長期計画の立案こそが行動変容の原点でなければならない。同じ道には戻れず、同じ市場は回復しないだろうというのが「新たな日常:ニューノーマル」の意味だ。

今年一年を3Aの行動原理でしのぎながら、長期の方向と市場を求めてゆくのが事業転換、経営の行動変容、ニューノーマルのあり方だろう。「ただひたすらの沈黙」は絶対にありえない自滅行為だ。

 

  • 物流業の長期視点

 

人手不足やトラック不足は解消されなければならない。既得権益や因習を振りほどいても解決するなら、古い物流規制を解除して、自家用トラックを再活用すればトラックもドライバーも満たされる。料金は公共化によってエッセンシャルワーカーの地位を保全すればよく、できない理由はない。関連する業界賃金格差も産業界への依頼ではなく、規制指導によれば実現できる。生産性や付加価値が足りないための賃金圧縮なら、産業再編を強制することで規模の拡大を目指せる。生産性向上には労働者人数、設備投資額、IT、ロボティクスなど、事業規模が欠かせず、自由競争の強化による適者生存を進めれば良い。今までの競争を暗に阻害していた様々な基本法令や助成制度の方向転換によって、十分に可能である。

需要の蒸発を感じるなら、主力産業を転換しなくてはならない。我が国も重厚長大産業というかつての基幹産業が、今や自動車・建築・不動産に移行し、世界はすでにGAFAというプラットフォーム産業が牛耳るようになっている。物流の強みは顧客選択が可能であるという自由度の高さであり、装置産業や労働集約と言われながらも顧客選択の組合せは自在に可能である。成長業種を探し出し、フィットさせる変容性に期待したい。

長期的な社会変容がもたらすもの、それは資本主義の変容も政治の転換も有るだろう。グローバル化は扉を閉ざすだろうし、成長は低迷を続けるかも知れない。もし、日本で守るべきものが国民と雇用であるなら、ぬるま湯の経営利権は放擲されることになるだろう。そうして長年続いた規制緩和が真の効果を生み出すことになるのだ。